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ランチミーティング

もっと知りたいベトナムのこと

 

 先日、NPO介護保険市民オンブズマン機構大阪(O-ネット)が主催する『もっと知りたいベトナムのこと』という市民講座に参加させていただいた。

 このイベントに参加しようと思った理由は、まず、私が大阪弁護士会で外国人を日本社会がどう受容すべきか、法的な問題を超えて話し合うPTに参加しているからである。

 次に、外国人が日本に受容されるためには、受け入れる側の日本人がその国のことをよく知っていなければならない、と思ったからである。

 本講義に参加して、私が大切だと思ったことは以下の3点である。

 

第一に、ベトナムの歴史や国民性を理解すること

歴史

 1000年の中国の支配、100年のフランスの占領、内戦が続いたのが20年と、戦火の絶えない歴史から、ベトナム人の平和と独立を希求する気持ちは強い。

 日本も過去、フランス植民地下に進駐し、クーデターを起こすなど占領者の側にあった。

文化・国民性

 ベトナム人の先生曰く、ベトナム語の6割は中国に由来し、ベトナムには中国文化の影響を色濃く受けている。

 旧正月や中秋節は、必ず実家に帰り、親の健康を祝福して、家族の絆を大切にする。

 いつもにこにこしているのは、諍いを嫌う、農村共同体の生きる知恵らしい。

 だから、ミスをしても、笑っていることがあるが、それは反省していないわけではないということらしい。

 何か間違えたら謝るべきという、日本人との間で時々誤解を生んでしまう。

 自然をよく観察するように、相手の顔をよく観察して、相手に関心を持っているという気持ちを伝えたいという気持ちがある。

 その気持ちが強すぎて、初対面でも、家族構成やプライベートなことまで、聞いてしまうことがあるという。

介護観

 ベトナムでは、祖父母・父母の面倒を見るのは子供、孫たちの仕事と考えるのが一般的であり、ヤングケアラーなどという考え方は全く存在しない。

 近時、日本の介護施設を参考にした高齢者施設が増えてはいるが、親を老人ホームに入れる文化は浸透しておらず、利用者が少ない。

 日本とベトナムは様々な相違点があるが、文化的な共通点も多くこれを梃にして相互理解を深めることができる。

 

第二に、ベトナム人にとって魅力ある受入先となること

1 道上助教の発表

 道上助教は、日本を働く場所として選んだベトナム人に対して、アンケート調査を実施し、「来日前」と「来日後」で次のような評価となった。

①来日前(高い評価の項目)

 ・日本で働いた経験があればよい将来得られる

 ・日本での仕事や生活を通じて日本語が習得できる

 ・日本語が上手なら、帰国後条件の良い仕事が得られる

 ・日本へ行ってから日本語の勉強を続けるつもりだ

 ・日本人にベトナムについて知ってほしい

 ・家族を経済的に助けたい

②来日後(評価が下がった項目)

 ・日本で働いた経験があればよい将来が得られる

 ・日本へ行けば高い技術が学べる

 ・日本の習慣や生活様式を学びたい

 ・日本人は親切だと思う

 ・私は日本文化が好きだ

 ・日本にできるだけ長く住むつもりだ

③評価

 本調査では、「学びへの意欲低下」と「日本への印象悪化」という二つの問題が浮かび上がったと指摘されている。

 

2 どうすればよいか?

学びへの意欲の低下

 働く場所として日本を選んだベトナム人は、日本に来てただ働いてお金を稼ぐだけではなく、経験と技術を身に着けてより良い将来を得たいなど、夢を描いて日本に来日する人も多いようだ。

 しかし、調査結果からは、このような期待が裏切られる結果となってしまっている。
向学心や向上心を持って日本に来てみたが、意外にも学びの機会が少なくがっかりしてしまったのかもしれない。
しかし、日本の外国人労働者受入制度が受入企業の経済的合理性を基盤に成立している以上、外国人労働者を労働力としてみる傾向があるのは、ごく自然なことともいえる。
 一方、働く側のベトナム人にとってあらかじめ職場を選定したり、途中で自分に合った仕事に変更する自由は非常に制約されている場合には、受入企業にとって自分たちが選ばれる立場であるという意識がどれほど存在するのだろうか。
 魅力的な職場、教育をしないと、海外から簡単に労働者はやってこない、入っても転職してしまうよっというプレッシャーを感じられる制度設計にする必要があるのではないかと、考える。

日本に対する印象の悪化

 来日前のアンケート調査で、「日本人にベトナムの事を知ってほしいという」項目が高い評価になっていた。

 少なからぬベトナム人が、日本人にベトナムに対して良い印象を持ってもらいたいと思って日本に来たのではないだろうか。
 おそらくベトナム人を受け入れる日本企業の多くも、日本に良い印象をもってもらいたいと願っているに違いない。
 それにもかかわらず調査結果では、日本人からベトナム語は禁止と言われたとか、日本人と接する場面での不寛容さを感じる場合があるとの報告が上がっていた。
 ベトナムから来た労働者が日本に来てよかった、この企業にめぐり合えてよかったと思って、日本の事を好きなってもらえるような、そんな制度にする必要がある。

 日本に来たベトナム人が長く日本に住み続けたいと思ってくれることは、受入先国としてとても誇らしいことである。
 そのためには、来日するベトナム人の気持ちを理解し、労働者にとって魅力的な受入先であることが、その受入先が選ばれる条件になることが重要であると考える。

 

第三に、ベトナム人の共同体参加を促すこと

 道上助教の報告ではベトナム人の実践共同体への参加を促すことが重要であるとまとめられていた。
 主催者団体の介護施設の方は、介護現場における外国人材は必要不可欠であり、そのなかでも向上意欲の強いベトナム人は大変重宝している。
 現場ではすでにリーダー格が育っている。

 今後、ベトナム人の中から管理職を育成していく気概のある日本企業が増えていけば、とても良いと思った。

 

(弁護士 岡本英樹)

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