(時事ドットコムから)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010070600175
(記事の要約)
夫の死亡により支払われた生命保険の特約年金受給権に相続税を加算し、加えて毎年受け取る年金230万円に所得税を課税した。最高裁は6日、これを所得税法で禁止される二重課税であると認定し、課税処分を違法として取り消しする判決をした。
(新人弁護士のコメント)
「保険金は、年金でもらうと損になる」という話を耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、よく考えると、同じ金額の保険金でも、一括でもらうと相続税だけですむのに、分割でもらうと相続税だけでなく所得税まで課税されるというのは理解しづらいところです。
(先輩弁護士のディスカッション)
弁護士B 「原審高裁は国側の主張を認めたようだが、その根拠はなんだったのか?」
新人弁護士 「高裁は、所得税について、掛金を払ったのはだんなさんで、奥さんは自分で掛金を払っていないのだから、年金を受け取る際には、所得税を上乗せしても不合理ではない、というものでした。」
弁護士A 「だんなさんが払った掛け金分の利益を奥さんが得ることについて税金をかけるのがまさに相続税のはず。そうすると、年金をもらうときに、もう一度税金を取るのはおかしいですね。」
弁護士B 「今までは年金型の保険が少なかったと聞いているけれど、判決の当否は別にして、この判決を機に、これからは年金型保険が増えてくるのではないでしょうか。」
弁護士C 「記事にもありますが、サラ金の過払い問題と同じように、この問題は大きな社会問題に発展するかもしれませんね。」
弁護士B 「しかし、こういった疑問を持つ人は他にもたくさんいたと思うが、これを訴訟にまでして、最後まで貫くのはすごいですね。」
弁護士A 「国が歳入不足という中でこういう判決を最高裁が出したというのは、司法の独立として評価するべきことなんでしょう。」
弁護士C 「最近の最高裁は実務に多大な影響を与える判決が増えている気がします。最高裁も少しずつ変わってきているのかもしれませんね。」
(新人弁護士のつぶやき)
こういった税務上の問題は非常に複雑であり、訴訟で争うにも難しいところがあります。その中でも素朴な疑問を大切にされ、しかも最後まで訴訟をやり抜かれた当事者と弁護士の方には敬意を表したいと思います。
※参考
国は過去の二重徴収分について、時効期間が過ぎたものについても返還する意向との報道がありました。