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 あのJR事故からもう14年

JR福知山線・信楽高原鉄道…平成「列車」の事件事故、忘れてはならぬ教訓

事故があった当日、私は京都で司法試験の勉強をしていた。
お昼前に地元の親戚から電話がかかってきた。滅多に電話をかけてくる親戚ではなかったが「今日は電車に乗っていないか?大丈夫か?」と慌てていた。
関西にお住まいの方はおわかりと思うが、京都市内と福知山線沿線とはかなり離れている。京都で受験勉強に勤しむ私が福知山線に乗ることはそうそうないのだが、遠く離れた地元の親戚は、関西一円は電車でつながっていると思って慌てたらしい。

 約2週間後に行われたその年の司法試験では、電車事故をテーマにした問題が試験問題に登場するなど、受験生の間で物議を醸したような記憶もあるが、大きくクローズアップされたのは、やはりJR歴代社長に事故の責任を刑事裁判で追及したことだろう。
結果はご存じの通り歴代社長の無罪判決が確定しているが、脱線の直接の原因は運転手の大幅なスピード超過だといわれている。
そこで裁判では、運転手がスピード超過をすれば脱線するかも知れないことは分かっていたのだから、スピードを検知して電車を停止させる装置(ATSと呼ばれる)を設置しておくべきだった、という点が争われた。
裁判所は、ATSを設置する義務を定めた法令は当時存在せず、大半の鉄道会社でまだ導入されていなかった装置なので、設置義務を怠ったとは言えず、刑事責任を問うことはできないという理由で無罪判決が確定している。
 これを私流に読めば、大半の鉄道で導入されていない最新鋭の装置を設置していなかったからというだけで社長を処罰していたのでは、誰も社長はできないし、そんな判断をしていたら日本で鉄道会社はやっていけない、という判断のように読める。
 それはそうかもしれないが、なにせ無罪判決である。
遺族の皆様の無念は計り知れないことだろう。
 
もちろん、無罪判決がなんら意味を持たなかったわけではなく、この14年間でJR西日本を含めて鉄道各社に与えた影響は大きかった。
 関西に住んでいる方はご存じだろうが、この事故の後、JRはなんらかトラブルがあるとすぐに電車を止めて安全点検などを徹底したため、電車の遅れが多発した。もちろん安全第一であるし、「同じ事故を起こせば今度は言い訳できない」という考えもあったことだろう。
 ほかにも様々な影響があったが、この14年間でどう変わったのか。
 改めて思い起こしつつ、今日も電車に乗ってみたいと思う。
(弁護士 北野英彦)

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