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調停成立後に、申立人の残した一言 ~調停でも人情を持って接すると人は理解してくれる

2019年3月18日、枚方市駅近くの料亭《仙亭》で枚方簡裁の調停委員の集まりである《枚方調停協和会》が開催されました。
その際、私の16年間の調停委員の退任に際して感謝状が贈呈されました。
その席上での私の退任スピーチです。
退任する調停委員としての心境と懐かしい事件の思い出について話しております。
ご参照いただければ幸甚です。

※スピーチ内容※
【現在の心境】
大澤です。
この度、16年間にわたり務めてきた調停委員を退任することになりました。
現在の心境は、
《好きでもない子に ラブレターもらい うれしいような悲しいような》
という川柳と同じで、
《調停委員を退任して、うれしいような悲しいような》というのが率直な気持ちです。
弁護士としての仕事に集中できるというのではうれしいですが、反面、調停を成立させて感じるあのなんとも言えない充実感を今後は味わうことができないという一抹の悲しさ、寂しさを感じています。

【先輩調停委員の教え】
さて、私が調停委員になったのは、自分で希望をしたのではなく、弁護士会からの指名でした。
そのため、当初はあまり熱が入りませんでした。
その最初のころの担当でよく記憶している調停事件があります。
一ノ瀬調停委員とペアを組んだ事件ですが、交通事故で双方の言い分が全く違って、自分の有利なことだけを互いにしゃべっているという案件でした。
双方が言いたい放題、そのため、私、癇癪を起しまして、《そこまで互いに自分の主張に固執するのなら、裁判にされたらいいでしょう》と、1回で調停を不調にしました。
後日、一ノ瀬委員からお話がありました。
《大澤先生、あの不調にした交通事件ね、裁判になりましてね》
私は、《そうでしょう。そんなケースです》と答えましたところ、
《ただ、裁判の1回目に司法委員が関与して和解が成立しました》
私は《・・・・・・》
やり方が上手であれば、調停で簡単に解決したでしょうと、やんわりと教えてくれたのだと思います。

【それからは成立を目指して尽力】
私の後輩で調停委員をしている弁護士がおりまして、彼が《調停の成立率を75%とすることを目指して頑張っている》という話をしていたこともあって、その後、できるだけ調停を成立させるという工夫をするようになりました。
そのおかげで、10年ほど前から、全件、調停成立ができるようになりました。
ただ、5年ほど前に、私、《胃がんの手術をしまして)、半年ほど、仕事を休ませていただきました。
その休み明けに担当した調停が2件、相次いで不調となりました。
1件は、相手方が出頭しなかったので、調停にはならなかったのですが、もう1件はどうしてもうまくいかず、不調となりました、
そのとき、調停を成立させるには体力がいるんだということを思う反面、つきも落ちたのかとも考えました。
しかし、幸いにして、その出頭さえしなかった1件を除いて、実質不成立はその1件のみであり、その後も退任まで、すべて担当した調停が成立いたしました。
調停が成立たからと言って、裁判所からもらう金額が増えるわけではないですが、自分の誇りとするところです。

【思い出に残る調停事件・・申立人が裁判所に残した一言】
その中で思い出に残る案件があります。
中川睦彦調停委員と担当した事件ですが、某有名国立大学の工学部を卒業した方が会社を解雇された、それが不当だとして金500万円を請求するという申立てでした。
会社はせいぜい25万円程度しか出せないと頑張り、結局、会社の言い分どおり、解決金25万円で申立人が了解して調停が成立しました。
その申立人が、裁判所の書記官に一言、言って帰ったそうです。
《本当に良い調停委員にあたってよかった》と。
調停委員としては、《金額は低いけれども、あなたの能力と将来を考えると、解雇された会社と訴訟をするのではなく、あなたの能力を活かす会社に転職をされるのがいいです。あなたの今後の生き方にとって、それが最もふさわしいことです》と説得しました。
調停委員としては法的なところではなく、人間として、精一杯の説得をしたことが、彼の心に響いたのでしょう。
この残された一言、本当にうれしかったです。

【今後は一弁護士として調停でお世話になります】
今後は、調停委員としてではなく、一弁護士として、この枚方簡裁に調停申し立てをすることもあろうかと思います。
そのときは、よろしくお願いします。
また、そのようなことになったとき、心密かに《担当する調停委員の説得ぶりを採点したい》と思いますのでよろしくご奮闘ください。
これまでの間、大変、長い間お世話になりました。
皆様、本当にありがとうございました。

 

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