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「聖職者」をブラック企業から救うために

外部リンク:教員の働き方改革でPR動画公開 文科省、過労死遺族も参加

教師の働き方改革が喫緊の課題となっていることは、もはや周知の事実となってきている。
日本の公立学校の教師は、教科指導だけでなく、課外で長時間の雑務に追われているという実態がある。
記事によれば、教材用プリントの印刷や入試の監督といった業務があり、そのような業務が授業やその準備の時間を圧迫しているようだ。

また、課外での仕事の大部分を占めるのは、やはり部活動であろう。
部活動は、教育課程の中に位置づけられていない「課外活動」であるため、部活動の顧問として働いている時間は、「労働時間ではなく、教師が自主的に活動しているもの」と考えられているのである。
実際に教師として働く知人に聞いてみれば、教師らは自ら進んで部活動の顧問をしているというよりは、ほぼ強制的に何らかの部活動の顧問に割り当てられ、土日の時間を部活動に費やしているというのが現状だということだ。
それでも、自主的な活動とみなされ、労働の対価は支払われていない。

このような現状を少しでも変えようと、文部科学省が、「ユーチューブ」に動画を公開して働き方改革の必要性を訴えている。
日本とイギリスを比較して、雑務は教師以外に任せることの提案や、一部の学校で行われている、部活動も顧問である教師がすべての活動に参加するのではなく、ある程度外部のボランティアやプロのコーチに任せるといった方法を提案するなどしているのである。

私個人としても、教師でなければできない仕事とそうでない仕事を分け、教師には教師にしかできない仕事に集中してもらえる環境を作るべきであると思う。
教師が教師としての仕事に集中できることが、教師らの精神的安定につながり、それにより教育の質も向上し、ひいては子供たちに良い影響を与えるのである。
また、教師らが、周りに気を遣って、体調が悪くても休みにくいという環境も問題であるが、教師らの負担が減れば、休む教師がいてもそれを補い合える余裕も出てくるのではないだろうか。

このような提案は、各地でなされており、実際に取り組みを始めている学校もある。
ただ、それがすべての学校に浸透しているかというと、そうではないだろう。
文部科学省の動画も、働き方改革を浸透させるきっかけの一つになるだろうが、それだけでは足りない。
働き方改革が進んでいない学校には、市町村や教育委員会などが進んで働きかけを行うなどして積極的に進めていかなければ、いつまでたっても改善しないだろう。

「聖職者」と呼ばれて、子供たちのために身を捧げることを期待されてきた教師らが、今、ブラック企業で助けを求めている。
教師らも人間であり、できる仕事の範囲には限界があることを、私たちは理解しなければならない。

(弁護士 岡井理紗)

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