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(第6回)一番のブラック企業は、なんと公立学校だった! 教師の残業問題

teacher_tensaku_man.png  ~教師の残業問題について考える~(弁護士 岡井理紗)

【問題は山積み・・・どうしたらよいのか】
これまで、5回にわたって、教師の残業問題について考えてきました。
公立学校の教師の労働に関しては、部活動に割く時間が労働時間にあたるかという問題(第2回)、公立学校教師に適用される給特法の問題(第3回)、非正規教員の労働と賃金に関する問題(第4回)など、様々な問題があることがわかりました。
ただ、ここで考えるべきは、「じゃあ、どうすればいいのか」ということです。

【給特法を改正するという方法】
どれだけ残業しても、通常の労働者のような残業代が支払われないという事態を解消しようと思えば、ネックになるのがやはり給特法です。
第3回の記事で詳しくお話ししましたが、給特法は、時間外勤務手当は支払わず、代わりに月給の4%にあたる教職調整額を一律支給すると定めた上で、教員の時間外勤務が増大しすぎないように、学校は教員に原則として時間外勤務を命じてはならないと規定しています。
 ただ、結局この規定は時間外勤務の増大への歯止めにはならず、それどころか時間外勤務をしても時間に応じた手当を支払わなくていいという状況に陥っています。
 この状況では、教員の時間外勤務が増大しすぎないように配慮した元々の趣旨は全く意味をなしていません。
 もっとも、給特法を改正すれば、時間外労働時間に見合った残業代を支払うということになるため、莫大な財源が必要となります。
 したがって、給特法を改正して終わり、という話ではなく、財源確保の方法まで考えておかなければなりません。

【残業上限を設けるという方法】
過重労働を強いられ、精神的にも肉体的にも追い詰められている教師の状況を救い、また時間外労働時間に見合った残業代のための財源も確保する方法を最もシンプルに考えれば、「残業上限を設ける」ことが効果的であるように思われます。
この方法は、2017年5月1日、教育研究者らの発案により、時間外労働を把握し上限規制を設けるよう政府に求めるインターネット署名を、「change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」という署名サイトで集めるという活動において、提案されました。
ただ、残業上限を設けただけで、仕事の量が減らないままでは、自宅に持ち帰って仕事をするなど、「隠れ残業」が横行し、教師らはより過酷な労働環境に陥る可能性があります。

【結局最も大事なのは、労働の効率化です】
 結局のところ、財源を確保し、隠れ残業を減らして、教師の過重労働をなくそうと思えば、最も大事になるのは、「労働の効率化」です。
 教師の労働問題を考えるにあたって根本にある問題点は、「なんでもかんでも教師がやるのが当たり前になっている状況」にあると私は考えます。
 教師というのは子供に関わる仕事ですので、1人の教師がすべての過程に関与できればそれは理想的です。
 ただ、理想を追い求めるあまり、その教師が心身ともに追い詰められるのであれば、そんな教師から教育を受ける子供にとっても、良い状況とはいえません。
 したがって、教師でないとできない仕事とそうでない仕事を見極め、事務的な仕事はアルバイトに、部活動はボランティアになど、現在教師がしている仕事の一部を教師以外に任せるということを考えるべきです。
これから先、集計や情報管理はAIに任せるということも可能になるかもしれません。
 いずれにせよ、教師の労働は、転換点に来ているといえます。

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