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あの法律はここに注目!

(第3回)一番のブラック企業は、なんと公立学校だった!

teacher_tensaku_man.png  ~教師の残業問題について考える~(弁護士 岡井理紗)

【教師の残業時間は過労死ラインを超えています】
 これまで述べてきたように、教師の残業時間は、年々増えています。
 今では、過労死ラインとされる、1ヶ月の残業が80時間を超える教員が、小学校で約3割、中学校で約6割に達しているようです。
 それなのに、教師には残業時間に見合った残業代が支払われていません。
 この問題の根幹にあるのは、教師の仕事の特殊性を理由に作られた、公立学校の職員を対象とする法律の存在です。
 この法律の特殊性・問題点について、公立学校の職員以外の労働者の残業代がどうなっているのかと比較しつつ、お話しします。

【民間企業・地方公務員の残業代は?】
 まず、民間企業については、労働基準法という法律で、時間外労働についての定めがあります。
 その内容は、会社と労働組合等が三六協定と呼ばれる時間外労働に関する協定を結ぶことにより、会社は時間外労働を命じることができるようになり、時間外労働をした労働者に対しては、その労働時間に応じた手当が支払われるというものです。
 地方公務員についても労働基準法で定められていますが、やや特殊で、「公務のために臨時の必要がある場合」に時間外勤務を命じることができるという内容になっています。
 ただ、時間外勤務をした場合の手当てについては、民間企業と同様、時間外勤務手当が支給されます。

【公立学校の職員に適用される法律・・・「給特法」の存在】
 公立学校の職員も「地方公務員」ですので、本来であれば、上記のとおり時間外勤務時間に見合った時間外勤務手当が支給されるべきです。
 しかし、公立学校の職員にのみ適用される法律があるために、勤務時間に見合った手当が支給されていないのです。
 その法律は、「給特法」と言われるもので、正式名称は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といいます。
 この法律には、時間外勤務手当は支払わず、代わりに月給の4%にあたる教職調整額を一律支給するということが定められています。
 その上で、教員の時間外勤務が増大しすぎないように、給特法は、学校は教員に原則として時間外勤務を命じてはならず、臨時または緊急の場合にだけ時間外勤務を命じることができるという内容にしました。
 しかし、実際、公立学校の職員は、「臨時または緊急の場合」だという理由で時間外勤務を学校から命じられて行っているわけではなく、「自主的に」時間外勤務を行っているということになっているのです。
 「自主的な時間外勤務」はどんどん増え、もともとは原則時間外勤務は禁止であったはずなのに、いつの間にか過酷な勤務状況になっている現場は多く存在します。
 つまり、結局は時間外勤務の増大への歯止めにはなっておらず、それどころか時間外勤務をしても時間に応じた手当を支払わなくていいというおかしな状況が認められてしまっているのです。

【給特法の改正を早急にするべきでは?】
 結局過酷な労働をせざるを得ない実情があるのならば、原則時間外勤務を命じられないことを前提に低額の教職調整額のみを支払うこととしている給特法の意味は、すでに失われているといえます。
 このような実情からすれば、一刻も早く、この給特法を改正し、公立学校職員にも時間外勤務時間に見合った手当が支給されるべきだと思います。
 ただ、現在は月給の4%しか支払われていないものを時間外勤務時間に見合った額まで増やそうと思えば、莫大な財源が必要になります。
 おそらくそのような財源は確保できないでしょう。
 しかし、勤務時間に見合った手当を支給するという制度になれば、学校側が職員の労働時間を正確に把握し、過酷な労働の実態を知ることになるでしょう。
 また、財源が足りないのであれば、各職員の仕事内容のうち、省ける部分はないか、ボランティア等のスタッフを募集してカバーできる部分がないか等の見直しがなされることも一定程度期待できます。
 公立学校職員の労働問題の改善のためには、給特法の改正は必須であるように思います。
~次回は、公立学校の職員に適用される法律とは?を考えます~

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