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あの法律はここに注目!

(第2回)一番のブラック企業は、なんと公立学校だった!

teacher_tensaku_man.png  ~教師の残業問題について考える~(弁護士 岡井理紗)

前回、日本の公立学校の教師は、授業、部活、人生相談など、様々な業務を一挙に引き受けている傾向にある、というお話をしました。
今回は、より具体的に教師の残業時間増加の原因を考え、特に部活動の問題については詳しく考えたいと思います。
【授業の準備のために時間外も働いている】
  小さいころ、「学校の先生は、授業中に生徒たちを指名して答えさせているだけでいいな」「大変な量の宿題を与えるだけで、自分は宿題もしないし」などと思っていました。
 しかし、それは大きな間違いであったことが、大学時代に塾講師のアルバイトをしてはじめてわかりました。
 授業をするために、教師がどれだけ準備をしていたか、ということを初めて実感したというわけです。
 教師は、放課後も次の日の授業に向けて準備をしているようですが、最近のニュースを見ていると、どうしても時間が足りず、家に持ち帰って仕事を続けるというようなことをしている方もいるようです。
 これは、教師の精神衛生上、また、それが生徒に与える影響を考えてみても、とても重大な問題だと思います。
 しかし、教師には、時間外に働いた時間に見合う残業代は支払われていません。

【「部活動の顧問」という仕事】
 公立学校(特に中学校・高校)の教師の多くは、上記のような教科指導関係の仕事に加えて、部活動の顧問という仕事をも任せられています。
 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、中学教師の課外活動指導時間は、加盟国平均が週2.1時間なのに対し、日本は3倍以上の週7.7時間と際立って長いことがわかりました。
 教師の多く(ほとんどかもしれません)は、教科指導のプロになりたいという志望をもって教師になっているのだと思います。
 しかし、教師として部活動の顧問を任された結果、肝心の教科指導の準備のための時間がなかなかとれず、常に仕事に追われているという事態が生じている例があるようです。

【部活動の時間は労働時間ではないという問題】
 上記のとおり、教師は教科指導関係の仕事をし、それに加えて部活動のために多くの時間を割かなければならないために、教師の勤務時間が増えています。
 そのこと自体もとても大きな問題なのですが、加えて、さらに大きな問題があります。
 それは、部活動は、教育課程の中に位置づけられていない「課外活動」であるために、部活動の顧問としての作業をしている時間は、「労働時間ではなく、教師が自主的に活動しているもの」と考えられていることです。
 顧問になることはほぼ強制されるというのが現状であるようですが、それでも「自主的なもの」とみなされてしまうのです。
 労働時間にあたらないということはすなわち、労働時間に対する対価である賃金(残業代)が支払われないということです。
 早朝練習に付き合っても、休日の練習や試合に付き添っても、それにかかる移動交通費もなかなか出ないというのが現状で、ましてや妥当な残業代が出るようなことはほとんどないようです。
 たしかに、生徒たちにとって、部活動に付き合ってくれる教師は、とてもありがたく、自分たちが安心して部活動に打ち込むためには、なくてはならない存在です。
 ですが、そうであるからこそ、教師の方々の心と体の健康や、勤務時間に見合った賃金(残業代)を支払うことは重要なことなのではないかと思います。

【公立学校の職員に適用される法律の謎】
 ここまで読んでくださった方には、「教師には、残業時間に見合った残業代が支払われていないってどういうこと?」「どうして部活動の顧問は労働時間じゃないの?」というような疑問が生じているのではないかと思います。
 これは、公立学校の職員に適用される法律があることに原因があるのですが、この話は次回にしたいと思います。
~次回は、公立学校の職員に適用される法律とは?を考えます~

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