事務所ブログ

この人生、この人情

「別れさせるのばかりが弁護士ではない」という話

弁護士というのは因果な商売で、人が幸福なときにはあまり出て行く場面がない。
例えば人が生まれたときは弁護士はいらないが、死んだときには弁護士が必要になる場合がある。
結婚にしてもそうだろう。祝福されるときには不要だが、夫婦がいがみ合った挙句のはてに出番がまわってくる。
結婚式に出席した弁護士が、挨拶でつい口がすべって「いつでも遠慮なく、相談に来てくださいね」なんて言うと、新郎新婦の両親から不吉なことをいう人だとにらまれることになる。

大澤photo4そんなときには(といって現実にそのようなことがあったわけではないが)「お父さん、お母さん、誤解しないでゆっくり私の話を聞いてください」と言いたくなる。
例えば、お医者さんだって、病院だって、病気のときだけに行くわけではない。健康診断でも行けば、予防注射をするためにいくこともあるだろう。法律相談したからといって、弁護士がすぐに離婚を勧めるものではない。先日、立て続けに2件の離婚相談をしたが、私たち弁護士の回答は、「もう少し、事実を確かめましょう」ということであり、「あなたの気持ちが本当に離婚したいのかどうか、確かめましょう」というものであった。
弁護士になりたてのときに失敗したことがある。
離婚したいという女性が、法律相談でさんざん夫の悪口を言う。
一生懸命に離婚の手続きを説明し、慰謝料から財産分与から子供の養育費まで事細かに説明し、夫に対する離婚の申し出の書面まで書いて用意していたのに、さて、その女性からはなんの連絡もない。

やむなく連絡したら、「先生、すみません。離婚止めます」と。
まぁ、経験不足でうかつだった。心の中をちゃんと観察しなかった自分が悪かったのだが、「さぁ、頑張っていくど・・というときに、ガツンとブレーキをかけられた」ような気持ちだった。

それからは、離婚したいという法律相談でも、果たして離婚を勧めるべきかどうかをいつも考えながら、話を聞いている。
離婚した方がいいケースであっても、財産関係がはっきりしない場合には、離婚を少し思いとどまって、財産を確認してもらうケースがある。
また、相手が離婚に絶対反対というような場合には、裁判所が離婚を認めるような事実を探すまで我慢するケースもある。
「あなたは離婚したくないのでしょう?今、どうすればいいかわからないのでしょう?」というようなときには、時間をかけて気持ちの整理をすることを勧めるし、場合によれば、夫婦円満にする方法も伝授することもある(もちろん、教えたからといって、実行できるわけではないことは百も承知だ)。
大澤photo3その後、再び、相談に来る人がおれば、本格的に離婚の手続きを説明する。
その後、二度と来ない人については、アドバイスが効果を発揮したのだと思うことにしている。実は、他の弁護士に離婚事件を依頼していたという可能性もあるが。 (龍)

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