山道に入って行こうかと迷ったが、もう暗くなってきた。
引き返し、寂光院の前あたりに来た時のことだ。
その門前にある柴漬店から
《どこから来はりましたんか?》という店のおばさんの声が聞こえてきた。
50歳ほどの女性のお客が答え、《そんな遠くから・・》というおばさんの声が続いた。
その客は代金を支払うと急ぎ足でバス停の方に戻って行った。
遠くとは一体、どこからだったのか?
暮れかけの薄暗くなった道をわざわざ柴漬けを買いに来る、
それは京土産で友人に渡すためか、あるいは家族で食べるためだろうか。