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全盲の女性を最後尾の席に ~自治体が行うべき障害者への配慮とは~

 

 

外部リンク:全盲の女性、音楽祭の席「無理やり」最後列案内

 

上記報道によれば、全盲の女性がクラシックコンサート会場で、購入した席とは違う席に座るよう主催者側に移動させられたようである。

おそらく入口で案内を主催者側に依頼したと思われるが、「指定の座席まで歩くのは危ないから最後尾で」という理由で制止されたのだろう。

しかし、平成28年に障害者差別解消法が施行された現在、自治体である名古屋市は少なくとも障害者に対する合理的な配慮を行う義務がある。車いすで案内したという経緯も、おそらく名古屋市が行った合理的配慮の一環なのだろう。

 

しかし、女性が購入した指定席に案内するのではなく最後尾の端の席に案内することは「合理的な配慮」と言えるのだろうか。

法律ができたばかりということもあり、これから議論されていくだろうが、なにが「合理的な配慮」と言えるのかは正直なところはっきりしない。

もちろん、コンサートホールの客席といえば階段状になっているだろうし、転倒の可能性もゼロではない。また、(想像を含むが)最後尾の席の方が火災時などに非常口に案内しやすい、という防災の観点から主催者側が言い訳することも考えられる。

 

しかし、もし防災が理由であればそもそも全盲の方がチケットを買う時点で注意を促さなければならないだろう。チケット購入を認めたのであればその座席で音楽鑑賞する権利がある。当日になって防災を理由に座らせないというのは筋が通らない。

 

名古屋市側には、購入した座席で音楽鑑賞するために必要な「合理的配慮」を行うべきだろう。それこそ、女性をスタッフの肘につかまらせて座席まで案内することも可能だったのではないだろうか。それほど難しい作業ではないように感じるが、人手不足かスタッフの配慮不足か、いったいどこにあったのだろうか。

訴状の内容は不明だが、障害者差別解消法に基づく合理的な配慮義務を怠ったことも慰謝料請求の理由の一つになっているのかもしれない。

今後の裁判の展開が気になるところである。

(弁護士 北野英彦)

 

(弁護士コメント)

大澤:

今回の記事は、障害者に対する合理的配慮の問題ではないように思われる。

全盲の女性は指定席を購入したのだから、その席でクラシックを鑑賞する権利がある。

その権利を全盲だという理由で侵害されたのだから、障害者であることを理由とする悪質な債務不履行の問題だということになる。

 合理的配慮が問題になるとすれば、その全盲の女性がトイレに行きたいと申し出を受けた場面であろう。

主催者側としては、そのトイレの要望を受けて、係の人にトイレまで安全に案内するべきであり、そのような行為をしてもらうことの根拠が合理的配慮ということになる。

今回のケースは、障害者の獲得した指定席での鑑賞させるべき債務を侵害したものであり、債務不履行として慰謝料ものだと判断されるケースではなかろうか。

少し横道にそれるが、昔、大原訴訟という国鉄(現JR)のプラットホームから視力障害者が転落して両足を切断した事件を担当したことがある。

その際、裁判所から、傍聴のため法廷に入る車いすの台数を制限し、車いすの場所まで指定されたことがある。

普通の健常者ならそんな台数(人数)制限も、位置制限をもないのに、車いすというだけするのは《差別》だという障害者からの抗議があがった。

裁判所が位置指定や台数制限を撤回しなかったために、法廷が開催されるときごとに裁判所構内でデモが繰り返された。

あれから約40年が経過しているが、いまだ、差別意識が改善されず、今回のような事件が発生したということだろう。

 

岡井:

 自身が選んだ席で鑑賞できなかったこと、また、当日急にそのような扱いをされたことに問題があることは明らかである。

 ただ、考えなければならないのは、会場側の防災対策である。

災害が起きた際、視覚障害者や車いすの方などが、混乱の中安全に避難できる体制が整っているのか。

特に体制を整えないままでは、また今回のように、自身で選んだ席と別の席に移動させられるという事態が生じかねない。

加えて、障害者といっても、人によってその程度や不得意な場面は違っているのであり、それに合わせた対応をすることも必要になるのではないだろうか。

某テーマパークでも、聴覚障碍者が付き添いの健常者がいないことを理由に入場を拒否されるというニュースがあったが、「障害者が来たらこうする」というようなルール作りではなく、それぞれに合った柔軟な対応ができるくらいの余裕が必要であるように思う。

 

畝岡:

 北野弁護士、大澤弁護士も指摘するとおり、本件で一番問題なのは、チケットは購入できたのに、チケット記載の席に座り鑑賞することができなかったという点であると思われる。

障害者への配慮ということであれば、チケットを購入する時点で購入者の情報の収集や購入者への案内が必要である。現代においてはインターネットでのチケット購入受付も多いので、比較的容易にそのような措置はとれるのではないだろうか。

 


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